DTMF(プッシュホン信号)とは?
DTMFは「Dual-Tone Multi-Frequency(2音多周波数)」の略で、電話のボタンを押したときに鳴る「ピ・ポ・パ」というトーン信号の仕組みです。各キーは行と列に対応する2つの正弦波を同時に送信します。例えば「5」を押すと、770 Hzと1336 Hzの音が同時に鳴ります。
これらの周波数ペアは、互いに簡単な整数倍(倍音関係)にならないよう設計されています。そのため、ノイズが多い電話回線でも交換機が正確にキーを識別でき、人の話し声で誤動作することがほとんどありません。
DTMF周波数一覧表
| 低音(行周波数) | 1209 Hz | 1336 Hz | 1477 Hz | 1633 Hz |
|---|---|---|---|---|
| 697 Hz | 1 | 2 | 3 | A |
| 770 Hz | 4 | 5 | 6 | B |
| 852 Hz | 7 | 8 | 9 | C |
| 941 Hz | * | 0 | # | D |
各キーは、行の低音周波数と列の高音周波数を1つずつ組み合わせて出力します。
なぜ1音ではなく2音なのか?
単一の音では人間の声と区別がつかなくなるためです。人の声には同じ周波数帯の成分が豊富に含まれているため、単一の周波数だけで検知しようとすると通話中に誤作動を連発してしまいます。
倍音関係にない2つの周波数を同時に声で出すことは、人間の声帯ではほぼ不可能です。この高い信頼性により、DTMFは従来のパルス回線(ダイヤル回線)に取って代わり、現代でも自動音声ガイダンスや留守番電話の遠隔操作、無線機器の制御などで使われています。
主な用途・活用例
- 自動音声ガイダンスのテスト スピーカーに電話機をかざし、IVR(自動応答システム)が正しくトーン信号を認識するかテストできます。
- アマチュア無線の制御 レピーター(中継局)や無線機の発着信・機能切替にDTMFコマンドが広く使用されています。
- 電気通信・信号制御の学習 周波数テーブルとあわせて確認することで、トーン信号の概念を視覚と聴覚で直感的に理解できます。
- 効果音・サウンド制作 映画、ゲーム、ポッドキャストなどの音声制作で、本物のプッシュホン音やダイヤル音を作成・録音できます。
- ハードウェアのデバッグ デコーダー(解読器)にテスト信号を入力し、正しく番号を検出できるか検証できます。
トーンの長さと送出間隔
DTMFの標準規格では、トーンの出力時間を最低40ミリ秒、数字間の無音間隔を最低40ミリ秒と定めています。実際の電話機では1キーあたり100〜200ミリ秒程度で送信されるのが一般的です。
デコーダーが番号を取りこぼす場合は、まずトーンの出力を長めに設定してみてください。携帯電話回線やVoIP(IP電話)などの圧縮回線では、トーンが短すぎると認識に失敗する原因となります。
A、B、C、Dキーとは?
DTMFの完全な規格には第4の列が存在し、「A」から「D」の拡張キーが割り当てられています。家庭用電話には搭載されませんが、米軍の優先通信ネットワーク(AUTOVON)や、現在のアマチュア無線・測定機器などで活用されています。必要な場合は上の設定で表示をオンにしてください。